C様・K様　2023年11月25日　熊野古道伊勢路・馬越峠エコツアー

　列車は晩秋の伊勢路を南下し、旧友と私を小春日和の尾鷲駅に落とす。

迎えてくれる人懐っこいお二人を見た瞬間、愉快な日になることを確信した。

木本高校の生徒さんによる車内アナウンスで旅情がくすぐられた初めての熊野古道だ。

直立する檜林を縫う坂道。敷きつめられた石畳。脇を彩るアサマリンドウ。すべてが美しく、踏みしめる感触はどこか懐かしい気がした。

男性ガイドはご老人だが陽気な語らいから古道にまつわる蓄積された思いがこぼれ、こちらからも思いつくままに尋ねては木漏れ日のように温かく答えてくれる。夏歩きの後のビール最強説など面白い話は尽きず、８１歳とは思えない飄々とした足取りは驚愕としかいいようがない。

友も相好を崩しながら、いつのまにか馬越峠に到達する。サンマ寿司を頬張って、肌寄せあう小さな町を見下ろした。

峠を下りるとお世話いただいた女性も合流し、彼女が創立に関わったという熊野古道センターに赴く。ツアーの予復習と深堀ができる見事な展示である。

熊野古道は、来年、世界遺産登録２０周年を迎える。地域振興は情緒だけでは続かない。彼女の言葉からは、覚悟と誇りと衰えぬ情熱を感じた。私達にひとときの至福をくれたガイドさん、そして訪問者を包み込んでくれる地域に感謝の気持ちを伝えたい。